ユキヤナギの丘で、もう一度君を好きになる

「さ、行こう!お腹空いちゃった」

詩織が勢いよく立ち上がるから、芝生がハラリと僕の腕にかかる。

「うん、行こう」

僕もお腹が空いていた。そりゃそうだ、朝ごはんは抜いてきたのだから。

腕についた芝生は立ち上がると、はらりと落ちてしまった。

詩織の後について丘の階段を降りる足取りは、1人の時とは比べられないくらい軽い。そして2人並んで出るいつもとは違う南の出口。

詩織と一緒だからか、見慣れない景色だからなのか……普段はあまり波立つことのない僕の気持ちは、ザワザワと音を立てるように高鳴っていた。

だんだんと建物が増え、店も並んでいるのが見える。

「どう?南は」

詩織の質問は、期待に満ちていた。

自分が生まれ育った町を自慢したい気持ちはよく分かる。

「うん……思っていたより、色々なお店があるんだね」

「でしょ?」

キョロキョロしている僕を見て、詩織も満足そうだ。

美味しそうなお惣菜屋さん、センスのいい花屋さん、どれも僕の目には新鮮に映る。

詩織にとっては通い慣れたいつもの通り。それでも僕が隣にいることでいつもとは違う何かを感じてくれているだろうか……なんてただの自惚れだろうか。