薄暗くなってきた公園を、詩織と並んで歩く。

僕は背の高い方ではないけれど、隣を歩く詩織はその僕より頭一つほど小さい。

広場のちょうど真ん中に来ると詩織は「じゃ、また明後日ね」と言い、手を振りながら南の方へサラリと僕に背を向けた。

そのあっさりとした別れ方に、僕は立ち止まったまま暫く詩織の後ろ姿を眺めるしかなかった。

一度だけ振り返った彼女は、笑顔でまた手を振ってくれた。その笑顔を見れたことに満足したのか、僕はやっと北向きに歩き出す。


僕は夕陽を左から受け、詩織は右から受けて。


僕は歩きながら、もちろん詩織のことを考えていた。

お互い住んでいる町と、年齢と名前しかしらない。

そんな僕ら二人が、どうなっていくのか……想像すらできない。

今詩織は、僕のことを考えながら歩いてくれているだろうか。

きっとそうだろうと思えるような自信もなかった。

それでも僕らはまた、会う約束を交わした。それでいいじゃないか。

詩織と美味しいパンを食べる、そんな場面を頭に描きながら。