それは、不意にやってきた。


ひときわ強い風が吹き、白い小さな花びらが辺りを舞う。

その自然の花吹雪を見ていたかった私は、なびくスカートを抑えながら視線を空へと向けていた。

お願い、まだ散らないで。


その時ふと、「……こんにちは」と小さな声が背後から聞こえたような気がした。


空耳？


遊具のある下の広場には小さな子供が遊んでいるのをよく見かけるけれど、丘の上と言っても眺めが良いわけでもないこの場所には、ほとんど人が来ることはなかったからだ。


「……こんにちは」


今度はさっきより少しハッキリと聞こえたその声に、私は反射的に振り向いた。


そこには私と同じくらいの歳であろう、黒髪の少年が穏やかな表情で私を見つめ立っていた。


思いもよらない訪問者に、私はどうしたらいいか分からず、まるで青い空を見上げるようにその少年を見つめていた。


「となり、座ってもいい？」


暖かい陽射しのような優しい声が、上から降ってくる。

「……ああ、はい。どうぞ」

私の答えを聞き終わる前に、その少年は私の右隣の芝生の上に座り込んだ。

悪い人だったらどうしよう……ほんの一瞬だけ過ぎった不安には気づかないフリをした。