ユキヤナギの丘で、もう一度君を好きになる

バイトが休みでよかった。

こんな酷い顔で店に立つわけにはいかない。

腫れた瞼は、私の拙いメイク術ではどうにもできない。

仕方なくそのままで、私はハルからの手紙とハートのヘアゴムを持って家を出る。

春の暖かい乾いた風が、私をきみの場所へと導いてくれる。

自転車のペダルを漕ぐ足は、思っていたよりも軽い。

熱が下がってからは、自分でも普段通りの生活をして、いつものように季節を感じたりしているつもりだった。

でも、まるで久しぶりに外の空気を吸ったような。

自分以外の世界が、まるで私とは違う方向に流れていたような。

その流れに、やっと乗れた、そんな感覚だった。

少しばかり息を切らして登った階段のその先には、もちろんハルの姿なんてなくて。

それでも、私の胸はもう痛むこともなかった。
そこには、すっかり花を落として緑輝くユキヤナギの木。

そして、葉が多くなってきた桜の木。

やっぱり、季節は進んでいるんだ。