ユキヤナギの丘で、もう一度君を好きになる

一瞬にして私はあの、ハルの穏やかな優しい風に包まれる。

『春太の春の字を取って工房の名前をHALUにしたんです』

『そうでしたか。弟さんとの大切な思い出の場所なんですね』

切なそうな表情でそう言ったアナウンサーのお姉さんは、もうハルのことなんてなかったかのように番組を進め始めている。

ーーハル!

箸を拾う指が震えている。


ハルーー


走馬灯のようにハルと過ごした日々が頭に浮かんでくる。

それはもう、私の心が優しく柔らかな何かに抱かれている、そんな感覚だった。そう、暖かなハルの腕に包まれているような。

「……うた……?」

「えっ?」

気づけば知らない間に、私の目から涙が溢れこぼれ落ちていた。

久しぶりに頬を伝う涙の感触は、思っていたよりもずっとずっと暖かくて。

「どうしたのよ?」

「いや……なんでもない」

なんでもないわけがない。

もう何年も涙を見せていない娘が、なんて事のないテレビ中継を見て泣いているのだ。

「うた……?」
「……」

慌てて拭った涙は少ししょっぱくて懐かしかった。

私……泣いてる。


泣けてる……?