長い反抗期だと思って寂しがっているだろうお父さんの気持ちも分かっているつもり。

私が素っ気ない態度を取るたびに、その寂しさを隠すお父さんに、申し訳ないと思っているのに。

泣きたいのに泣けない。その理由と同じ、素直になれないんだ。


「さ、着替えてらっしゃい」

「うん」

お母さんの声に促され、部屋へと入り最後の制服を脱ぐと、ユキヤナギの花びらがいくつかハラリと床へと舞った。

それを見てざわついた胸は、気づかないふりをして。

それでも脱いだスカートのポケットに入っていた卒業の花飾りに気づくと、今日出逢ったハルの優しい笑顔や寂しげな佇まいを思い出す。

それはまるで夢の中での出来事のように頭の中に浮かんで、そしてすぐに消えていった。


「さ、行こう。お腹すいた!」

頭の中と胸の奥に渦巻くドキドキと、少しの不安を隠すように私は元気よく部屋のドアを開けてそう言った。