ユキヤナギの丘で、もう一度君を好きになる



ーートントン

部屋のドアを叩く音で目がさめる。

カチャリと優しいドアの開け方。

やっぱり体調を崩していると、お母さんもいつもより優しくなるんだな。

なんて思いながらそのまま目を閉じていた。

「……うた、ちゃん?」

ん……?違う?

優しいドアの開け方も、その声もお母さんのものではなかった。

ゆっくりと目を開け、その優しさの主を見上げる。

「店長⁈」

そこにはバイト先であるコンビニの店長が立っていた。

制服も着ていないし眼鏡もかけていないし、私の部屋だし。なんだか違う人みたい。だけど、いつもの笑顔。

「ちょっと、うたちゃん。大丈夫?珍しいわね、風邪なんて」

ああ、そうか。お見舞いに来てくれたんだ。またてっきり変な夢かと。

「はい、すみません。バイト休んじゃって……」

「そんなこと気にしないで」

店長の、いつもの笑顔が私を少しだけ日常へと連れ戻してくれる。

「お見舞いにプリン持ってきたから、食べられるようになったら食べてね」

「はい、ありがとうございます」

私が食欲がないことはお母さんから聞いたのだろう。