ユキヤナギの丘で、もう一度君を好きになる

『うた、大好きだよ』

その言葉を、ハル自身から聞きたかった。でも、それはもう叶わない。

そして私も、きちんと言葉にしてハルへの思いを伝えたかった。

もう、後悔しても遅い。

吐く息までが震えている。

私とハルは、詩織と春太の生まれ変わり。ハルは、もうここにはいない。

そんな手紙の内容は、頭には入ってきて理解はできたつもりだ。

でも、一緒に過ごした数日間のハルの気持ち、これからの私の気持ち。

それを理解し、整理して。ハルが望むように前に進めるようになるには、今の私の心の器ではとてもじゃないけど許容量を超えていた。

心は、この現実をまるで他人事のように捉えていた。

震える手で便箋を封筒にしまう。

そして、まるで自分の身体ではないような感覚に陥りながらユキヤナギの元へ足を運ぶ。

さっき地面から掘り出されたばかりの古い缶を手に取る。

本当ならば何かの記念日に、春太と詩織が2人で開けるはずだった愛が詰まったこのタイムカプセル。

そっとその色あせた手紙を持ち上げ裏返す。そこにはさっきまで必死に読んでいたハルの文字で、『詩織へ 春太より』

もう1通には、女性らしい整った文字で『春太へ 詩織より』