「いただきまーす」

家族3人揃っての夕飯は久しぶりだ。前は私が友だちと遊んでいて逃してしまっていた。その時はお母さんとケンカをして家を飛び出したっけ。

ああ、そうだ。その時はハルが私のそばにいてくれたんだ。話を聞いてくれた。


『僕はいつでもここにいるよ』


ハルが言った言葉が頭に蘇る……。


『うた』


優しいハルが私の名前を呼ぶ声が頭から離れない。

うそつき。

いないじゃないか。ハルは、私の隣にいない。

「……うた?」

「どうした?元気ないな。何かあったか?」

「そうよ、友だちとケンカでもしたの?随分早く帰ってきたし」

黙り込んだ私を心配する両親。

少し前の私なら、そんな優しさを煙たく感じていた。

「いや、何もないよ。大丈夫」

まだ、ハルのことを両親に話すことはできない。それにはもう少し自分の気持ちの整理をする時間が必要だ。

「そう?なら、いいけど」

「ほら、食べなさい」

「うん」

そんな、両親の私を思う暖かい気持ちを素直に受け入れらるようになったのは、ハルのおかげだ。


ーーハル


今、どこにいるの?