「また道混んでるかな」

「ああ、うん」

僕らは時間によって色を変える青い池に後ろ髪を引かれながら、ホテルへ戻るために車に乗り込んでいた。

地図を見ながら2人で帰り道を探した結果、少し遠回りになるけれど空いていそうな北海道らしい真っ直ぐな道のルートを選んだ。

渋滞やらなんやらで予定よりは遅くなってしまったが、時間を気にしなくていいのは嬉しい。

すっかり日の暮れた道は明るい昼間とはまた違う顔を見せていた。どこまでも続く一直線の道には街灯の明かりだけが幻想的に照らされている。

「お母さんたち、家に着いたって」

「そう、札幌観光は楽しめたかな」

「うん、やっぱり人が多かったみたい」

今朝ホテルで別れた母親と携帯で話していた詩織が報告してくれる。

「まあね、シーズン中はどこも混んでるんだろうね」

そんなたわいない話しをしながらハンドルを握っていると、少し先の対向車線を走って来るトラックのヘッドライトがやけに早くフラつきながらこちらへ近づいて来ることに気づいた。


あれ?


これはおかしい、そう思った時にはもう遅かった。


「詩織っっ‼︎」


そう叫んだ僕の目の前には大きなトラックの眩しいライトが押し迫っていた。

キーッ‼︎

けたたましいブレーキの音が、辺りに響く。


ドンッ‼︎ ガッシャーン‼︎


今まで感じたことのない衝撃を身体中に感じ

僕の記憶は、途切れたーー