「……よかったね、ここに来られて」

詩織?

いつになく、その青を映す詩織の瞳は感慨深く切なげに見えた。

「ん、そうだね」

僕らが北海道での式を決めたのは、この場所を訪れたかったからだ。

雑誌で見たその写真は、目を見張るほど美しく僕らを惹きつけ、いつか一緒に行こうと約束をしたのはいつだったか。

「本当に、こんな日が来るなんてね」

僕の腕に、腕を絡ませてくる詩織の薬指には婚約指輪の上に重ねられた結婚指輪が光る。

池を見つめる詩織の表情は伺えなかったが、きっと嬉しさと感動で胸を震わせているのだろう。

僕も、もちろん同じ気持ちだった。

7年前のあの日、あの丘で出会ったのはきっと偶然なんかじゃない。そう感じられるほど、僕にとって詩織はかけがえのない存在となっていた。

いつも明るくしっかり者の詩織はいつも僕の支えになり、ポジティブな僕の存在はきっと詩織をいつも前へと導いていることだろう。

「……詩織」

僕の声にゆっくりと顔を向けた彼女の目は憂いを持たせながらも僕の姿をしっかりと捉えている。

「ん?」

「ありがとう」

これからも、よろしく。

「うん、こちらこそ」

そのはにかんだ笑顔を、たまらず抱きしめた。