それからは、特に何もないまま、年末が過ぎて行った。

あれ以来、メールをすることもないし、メールがくることもないし。

お弁当係だけなんだから、学校がなければ、あたし達の関係なんてこんなものだ。


………でも。

常に、携帯を気にしている自分がいた。

ずっと触っているわけではなくて、新着お知らせのランプが点灯していないかと、携帯を凝視してしまうことがあった。

今日は12月30日。

特に連絡は、ない。

そう思った矢先、ブルブルブル、と机に置いていた携帯が震えて、勢いよく顔を上げた。

雑誌がいいところだったけど、無意識のうちに雑誌は脇に投げ出していた。


「も、もしもし!」

『あ、もしもし知枝里~?』


親友なべっちの声に、少しだけがっかりした自分がいた。


(ごめんよ、なべっち)


第一に、アドレスしか交換していないのだから、奴から電話がくるわけがない。


「もしもしー?どうしたのー?」


気を取り直して、携帯越しのなべっちに問い掛けた。


『いやぁ、実はねー…。知枝里にお願いがあって…』

「え、もしやまた外泊!?」

『違う違う!ほら、毎年恒例にしようって言ってたあれよ、明日の夜の、あれ』

「あ…、ああ!初詣!」

『そうそう!去年は一緒に行ったじゃない?でさ、今年のことなんだけどさぁ』

「……いーよ。初めての年越しだもんね?」

『えっ、いいの!? 知枝里!』


そのつもりで電話してきたくせに。

くそ…っ、やっぱり……。


(彼氏欲しーよぉぉぉ!!)