夏はグングン、進んで行った。

朝から勉強。

お昼は安堂くんと一緒にお弁当。

午後からまた、勉強。放課後も勉強。

でも陽が落ちるのが遅くなったから、二人の時間も長くなった気がした。

たまに一緒に帰る。

相変わらず女子には羨ましがられているけど、それにもだいぶ慣れてきた。

安堂くんが気にしないから、あたしも気にしないでいられるようになった。

…つまり、こういうことなんだと思う。

いつまでも先生のことを気にしてたら、いけないってこと。

あたしが気にしないでいれば、きっと安堂くんの中から少しずつ消えていく。


「やーっと終わったねぇ。補習」


夏休みもあと10日くらいになって、ようやく補習が終わった。

プールに海に…と、行きたいところはいっぱいあったけど、全然クリアできなかった。

模試が終わる度に、その復習ノートというものを提出しないといけなくて(うちのクラスだけ!)、半分は間違っているあたしはいつもそれに追われていた。

でも、そのおかげで、安堂くんとは一緒に勉強ができた。

土日も、図書館やお家にお邪魔したりして。


「始まるまでは長い休みになるだろーなーって思ってたのに…、ほんとあっという間だったね」


半袖のシャツもどこか儚げで清楚に見える。

首元まできちんとボタンを閉めてるところが、意外とポイント高いんだ。

桜田くんみたいに、2つも開けてるより断然いい。

雰囲気は、温室の王子様、的な。

……はっ!

てことはやっぱり、女の子もそうなのかな!?

前に安堂くんも言ってたし。

第一ボタンを開けてるよりも、きちんと閉めてる方がオンリー1になりやすい、とか?


(安川くんと桜田くんの言った通りだぁぁ…!)


ナッチに、教えてあげないといけない。かも。


「……ぷっ。小林、今、全然違うこと考えてたでしょ」

「はっ!!」


安堂くんの声に、無意識に口が開いていたあたしは、さっと口を閉じた。


「ぜ、全然っ」

「分かりやすいよ。顔に全部出ちゃってる」


安堂くんがクスクスと笑った。

ただそれだけで、今でも頬が紅潮する。

安堂くんの笑顔が見れるだけで、ただ、幸せ。