「勝手にこんなやせ細ってる。俺には触るなって言うのに、他の男には触らせてる。
 …俺のこと、いじめて楽しい?」


目を細めて、訴えかける安堂くんにあたしは慌てて頭を振った。


「そ、そんなつもりじゃ…っ!!」

「だったらさ。俺と遠ざけたりしないで。他の男に触れさせたりしないで」


優しくて、その気持ちが柔らかくて、涙があふれてきた。

今度は、冷たい涙じゃない。

温かな、涙。

言葉にならなくて、「うんうん」と何回も頷いた。


「さっき、そこで聞いたんだけど、小林、ダイエットしてたんだって?」


安堂くんが言う。あたしは咄嗟に頷きが止まった。


「何のために?」


その声が、どこか楽しそうに笑っている。

ふるふると頭を振って、それを拒否したけど、安堂くんは許してはくれなかった。

腕の中、逃げられなくて、あたしは真っ赤な顔で答えた。


「……な、夏休みのために…」

「夏休みって……。海とか、プールとか?」


そこは予想外で、でも慌てて頷いた。

安堂くんは「ふーん」と鼻を鳴らした。


「……楽しみだな。小林の努力の成果」

「!!!」


安堂くんがソウイウ意味で言ってるんじゃないって分かっていても、頬が赤く染まってしまう。


「もう何回も見逃してるもんなー」


―――!!!


「な、何を!?」


グルグルと目が回る。

ま、まさか、気付いてない、よね…!?


「何って…」


安堂くんがあたしの耳元でそっと告げる。


「!!!!!」


その言葉に、顔を通り越して耳まで真っ赤になるあたし。

きっと、もう逃げられない。

一夏の甘い体験が、もうすぐ、始まろうとしていた。


(どうしよ~~~~~~~~!!!!)