安堂くんに名前を呼ばれ、廊下を歩いていたあたしは、安堂くんのクラス、8組へと近付いた。

今日もその耳に、あたしがあげたピアスが輝いている。


「数Ⅲの教科書、持ってきてる?」


こんなことも出来ちゃう。

教科書の貸し借り!

あたしずっと憧れてたの!


「持ってきてるよっ!」


あたしは張り切って、安堂くんに貸してあげた。






――――――――が。


「数Ⅲとかかったりぃ~」

「……………、」


どうやら次の時間、あたし達のクラスも数Ⅲだったらしい。


(景山てんてーに怒られる…)


鼻水をたらりと垂らし、あたしは固まっていた。

もう予鈴も鳴ってしまった。

他のクラスに借りにいくことも出来ない。


「っくそー、景山に見つかったぁー」


席について固まっていたところに、のそっとでかい図体が、廊下から入ってきた。

金髪の不良。

ピアスをいくつもつけていて、たまに髪を編み込んでいたりする。


「あ、この前はありがとねっ。お陰で髪、けっこー調子いー」

「桜田くんっ!!!」


あたしは涙目で桜田くんを見上げた。


「…え、う………、なに?」

「教科書見せてくださいっ」


サボりの常連桜田くんがいてくれた。

どうにか首は繋がった。