「母さん・・母さん・・」
一匹の子ぎつねは弱々しい声で、少し前まで母親だったのだろう腐敗しきった塊にしきりに呼びかけていた。
しかし、そんな呼びかけも空しくその声は消えていった。
先週起きた大雨で、山は崩れた。子ぎつねとその母親も巻き込まれ、母親は即死した。
子ぎつねは辛うじて息はあるものの、複雑に入り組んだ木の下敷きになり、身動きもできない。
子ぎつねの体力は限界だった。
体は重いし喉の奥からは血の味がして、息もできない。母さんのいうように死ぬことは美しくない。
苦しい。
・・・次に生まれてくるときは、もっと幸せで、美味しいものをお腹が一杯になるまで食べられて、死が安らかにやってきますように。
そう願うと、子ぎつねはそっと目を閉じた。

