Sena side
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「ちょっと、顔かしな。」
「は?」
「いいから!はーやーく!」
昼休みももうすぐ終わるって時に、礼央と一緒に俺の机へとやって来た片瀬は、そのまま俺を廊下まで引きずるように歩くと再び口を開いた。
「何してんのよ、バカ!」
つーか、キャラちげぇし。
誰だよ、アンタ。
「だから、何の話?」
礼央へとちらっと視線を向けて見ても、『俺は茉央の味方』と全身で伝えてきやがる。
「うちの可愛い可愛い佑麻ちゃんが、南くんのせいで傷心してるの!」
「………。」
いや、振られたの俺だし。
喉まで出かけたその言葉をぐっと飲み込む。
「おまけに佑麻ちゃん、私たちにも言わずに嶋中くんとデートに行ってるし!嶋中くんも嶋中くんで、南くんと別れた佑麻ちゃんにここぞとばかりにアタックしてるし!」
キィィイー!!と効果音を付けてハンカチを噛む片瀬に、普段の面影はゼロ。
落ち着けよ。
って、内心 落ち着かないのは俺の方か。
胸のあたりがザワザワして仕方ない。
「……で?俺にどうしろって?」
この後に及んでこんな言葉しか口から出ない。焦ってないフリ、それがどうした?って態度。
こんな言葉で自分 繕ったって、佑麻がいなくなって傷まみれだってことがみんなにバレバレだってことは自分でも分かってんのに。
きっと良くあるドラマのヒーローなら、この言葉を聞いてすぐに走ってって、ヒロイン捕まえて。
自分の想いを熱く伝えて抱きしめて。
ごめんなって、もう離さねえって言えるんだろうな。


