「…嶋中くん、優しくしてくれたよ?」
「…俺を拒絶した挙句、久々 話せたかと思えば嶋中…嶋中って。それも、計算?…なわけねーよな。」
独り言にも近い瀬那の言葉に、ハッとする。
「計算とかよく分かんないけど、きょ、拒絶しちゃったのは反射って言うか…その、本当にごめんなさい!」
ギュッと瀬那にしがみついて、顔を思いっきり瀬那の胸へと埋める。
「…俺、結構 ショックだったんだけど、」
「ほ、本当にごめんなさい!!瀬那が好きすぎて、あの時は冷静に物事を考えられなかったって言うか…その、」
─────────ギュッ
「っ、?」
私の背中に回された瀬那の手が、ギュッとキツく私を抱きしめて、まるで"離れんな"って、そう言われてる気がする。
「嘘。ごめん。……俺も悪かった。乙葉の受験のときのこと思い出して、つい原野の世話焼いた。」
反省しているらしい瀬那の声。
瀬那から謝られる事なんて滅多にないから、私、今すごい貴重な経験をしたかも。
…紗菜ちゃんのことを好きになった訳じゃなくて、乙葉ちゃんの受験のときを思い出してほっとけなくなっちゃっただけなんだ。
なんだ…そっか、良かった。


