「ん・・・?ここは一体・・・?」

気がつくと少年は見知らぬ場所で作業服を着たまま寝ていた様である。どうやら随分と長い時間気を失っていたみたいである。

「目が覚めた様ですね、嚮洸さん」

突然、少年の目の前で小麦色の肌をした金髪の女の子が現れた。

「え、誰?」

「申し遅れました。私は太陽神クレアと言う者です。貴方はマンションの8階の足場から足を踏み外して転落して死亡しました。」

クレアという女神は可愛い顔してサラッととんでもない事を言った。

「俺が死んだ・・・?嘘だろ・・・!?だってほら、体動くし全く痛くないし!」

俺は強がってはいるが確かに死ぬ直前の記憶が有る。マンションの足場から足を踏み外し地面に激突するあの瞬間の記憶が確かにある。

アレが死の瞬間だったんだ・・・。俺の人生の最後の記憶という奴か・・・。

俺は徐々に自らの死に納得してきた。短い人生だったが不思議と後悔は無い。後悔が無い理由は恐らく、自分に積み上げた物が無いからだろう。俺は人生をただ何となく過ごして高校を中退している為、必然的に友達はいないし、かと言って仕事をそれほど長く勤めた訳でもないから仕事に対する後悔も対して無い。まぁ夢はあったが、それでも後悔・・・というのはなかった。

「落ち着いたみたいですね。」

「ああ、落ち着いた。俺は自分の死に納得した・・・死を受け入れたよ。だから大丈夫だ。俺がこれから向かう場所はどこだ?地獄か?それとも天国か?」

俺が納得した表情でクレアに尋ねる。

「いえ、貴方は死ぬには惜しい程若いです。ですから貴方にはこれから異世界に行ってもらいます」

俺はその言葉を聞くと「は?」と声が出てしまった。

「異世界っていわれても困るんだが・・・いわゆるゲームの世界みたく魔法や剣で戦ったり、魔王を倒したりするのか?」

「そうです。正にその通りです。貴方にはこれからそこへ行き魔王を倒して貰います。そして、その世界で新たに人生を送って下さい。」

クレアはそう言うと笑顔で微笑む。

「しかし、その世界ってどうなってんだ?その世界の世界観が分からないのだが」

「分かりました。それではこれから異世界について説明致しましょう。」