喧騒の工事現場である一人のヘルメットを被った少年が汗水を流しながら仕事をしていた。その少年は目つきが悪く髪も金髪でいかにも不良という感じである。しかし、その少年の目は不良に多い腐った目では無く、光輝いていた。こういうのをやる気に溢れていると言うのだろう・・・ともかく彼は不良だけど普通の不良では無く目的意識・・・いわゆる夢があるようであった。

少年は日差しの強い空と見た後に周りの景色を見る。工事現場の近くでは高校の卒業式を済まして帰っている高校生がいる。

「俺も高校中退しなかったら今日卒業していたんだよな・・・」

ぽつりと呟く少年。彼は2年の夏休み前に高校を中退していた。それ以来少年は工事現場の作業員として毎日朝早くから起きて仕事をし、夕方5時過ぎに仕事を終える。そんな仕事を1年半年続けて来た。最初は体力的にキツく、柄の悪いおっさんばかりでみんな言葉遣いも悪く、時には殴り合いの喧嘩もある。怒号が聞こえるのは日常茶飯事で精神的に辛い時もあった。しかし、辞めようとは思わなかった。恐らくこの仕事は俺に合う仕事なのだろう。

しかし、それでもキチンと高校に行って卒業すれば良かったと少し後悔してしまう。

「春は別れの季節だよな・・・」

そう呟くと少し寂しく感じた。別に誰かと別れる訳ではないが、それでもこの時期は何だか心が寂しく感じる。


それから10分ほど時間が経ち昼飯の時間になる。

「洸、先に飯食って来て良いぞ!」

少年は自分の上の階の天井を作る作業をしている父親に言われとりあえず下に降りる。少年が仕事しているところは8階建てのマンションである。少年はそのうちの7階を担当していた。

「分かった。先に飯食っとくわ」

少年は父親にそう言って足場から落ちないように気をつけて降りる。少年はその時、父親を見て仕事熱心だと感じた。少年は高校中退してから父親が親方をする現場作業で仕事をするが、父親と仕事をするうちに、父親を超えてやろうと感じてしまった。高校中退するまでは父親の事を馬鹿にしていたが、実際に一緒に仕事をすると自分の父親を凄い人と認識してしまった。

それまでは汗臭くて柄の悪いクソ親父と思っていたが、今では尊敬の対象となってしまったのだ。それからの少年の人生の目的は父を超える建築家になることであった。



少年は今日の仕事も順調に進んで良いご機嫌で足場を歩いていく・・・がその時であった。少年は足場を踏み外してしまった。

「えっ・・・」

次の瞬間、少年は頭から地面へと落ちていく。