こちら側に歩いてくる颯は、こちらを見上げた。

私と颯の視線が交差する。


「花音っ!!」

「っ!!」


すると、颯が大きな声で私の名前を呼んだ。


私は、コートが見下ろせる場所で、手すりに近づき、出来るだけ近くに寄る。


「花音、あの場所……俺たちの、始まりの場所で待ってる!!」


始まりの場所……。 


そんなの、一つしか思い付かない。


たぶん……ううん、絶対にあの場所だという確信があった。


『あらゆる試練に耐えた誠実』


カーネーションの花言葉だけど、私は今、颯がたくさんの苦しみ、試練に耐え抜いて、私に証明しようとしている誠実さを感じている。


「分かった、必ず行く!!」


そう言って、私は笑みを返す。


颯の、戦う姿を最後まで見届けた。


そして、颯は今なら……どんな困難があっても、立ち上がる強さがある。


私は、そう返事を返して席へと戻ると、鞄を肩にかけた。


「花音、もう帰るの??」

身仕度をする私を美緒が不思議そうな顔をする。

そんな美緒に、私は頷いた。