私に偉そうな事は言えない。

今日だって橋本さんを助けた事で自分がいじめられたらどうしようってそればっかり考えてた。

橋本さんはいじめられても遅刻なんかせずに学校に来るのに私は教室にすら行けない臆病者。

学校なんてひとりになったら地獄って蒼井に言ったけど地獄の中に橋本さんはずっといるんだ。

そう考えたら笑う事なんて出来ないよ。


「も、もし美保が……美保だってもし自分がされたら笑えない……でしょ?」

橋本さんを見ていると私は辛い。

最近特にそれを感じている。


「私はされないよ。そうならないように努力してるもん」

美保は壁に寄りかかって肩にかかる髪をはらった。

「沙織って怖い先輩からも可愛がられてるし誰が見たって調子乗ってんじゃん?でも笑って友達やってればなんてことないし」

「……」

「うちのクラスってまぁまぁ目立つ生徒が集まってるでしょ?授業中も騒がしいし特に女子はみんなギャル。そんな中で橋本さんは明らかに浮いてるし、冗談も通じないし、はっきり言っていじめられやすいタイプなんだよ」

いじめのはじまりなんて本当に些細な事。

学校っていう狭くて小さな世界ではみんなと
〝同じ゛じゃないとハブられる。

「いじめられて可哀想って思うけど、橋本さんと仲良くしたら次はあかりがいじめられるかもよ?いいの?」

「私は……」

その後の言葉が出てこない。

「いいじゃん。今まで通り見て見ないフリで。私はあかりとは気が合うし唯一気を遣わないでいられる友達なの。だから橋本さんとは関わらないで」

美保が私を呼び出して言いたかったのはきっとこれ。

それはつまり私が沙織に目を付けられたら仲良く出来ないって意味?

そうだよね。そしたら次は美保がターゲットになるかもしれないし、だから誰もいじめられてる人を助けない。