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次の日はお母さんの言っていた通り雨だった。

あれからいくら傘の事を説明してもお母さんは知らないの一点張り。あんなに目立つ傘忘れるわけない。

それに一緒に買い物に行った時「その傘可愛いからお母さんも違う色が欲しい」って言ってたのになんで……。


────それお前が作った妄想じゃね?

蒼井の声が聞こえた気がしてため息が出た。

変な事を言う蒼井も傘を忘れてしまったお母さんもおかしい。ピタリと重なっていたはずの毎日が少しずつズレていく。

コンビニで買った安いビニール傘は雨音がうるさくてなんだか耳障りだ。

空から落ちてくる大きな雫は地面を真っ黒にして、当たっていないはずなのに濡れているような感覚がした。

そんな灰色の空を嫌な気持ちで見ていたら突然砂嵐のようにザザザっと目の前が揺れた。


───前から思ってたんだけどあかりってうざいよね。

高笑いと一緒に聞こえてくる声。

突き刺すような視線と鉛のように重たい体とただ消えたいと望む私。

泣きながら黒板に書かれた文字を消して、そのまま学校を飛び出して、ずぶ濡れの私の手からはチョークの粉が混ざった白い雫が落ちていた。

なんで、なんで、なんで。

あんな事しなければよかった。
そしたら私は……………

……………………その時、ハッ!!と我に返って砂嵐のようなものは消えていた。


なに?今の…………

ただ心臓がバクバクとしていて気付くと傘を持つ手が震えていた。