それは橋本さんをいじめてる女子3人組。

確か走るのダルいから歩くって言ってたのを聞いたけど、まさか私達より遅い人がいるなんて思わなかった。

だって頑張って走ってもカタツムリ並みに遅いし。


「つーか橋本じゃん。なになに気持ち悪いの?」

その口元はニヤニヤしていた。

「どうせ仮病っしょ?つーかそいつに触らない方がいいよ?菌とか移りそうだし」

あははと耳に響く高笑い。

そういえば教室でもばい菌扱いされてるのを見た事がある。橋本さんに恨みがあるわけじゃないのになんでそこまでするのかな……

「ってか、あかりってそいつと親しいの?」

その中でも1番存在感が大きい長谷川沙織が私を見た。

私が下の名前で呼ばれてる事に驚いたけど問題はそこじゃない。

私を見る目が一瞬鋭くなったのは気のせいじゃない。

別に私が誰と親しくしようと自由だけど、きっと橋本さんと仲良くしたら私はこの人達の敵になるんだろう。

平穏で楽しい学校生活を壊されるのは嫌だ。今が1番充実してるのに波風なんて立てたくない。

「親しいわけじゃないけど…」

ごめん、橋本さん。

親しくないと断言は避けて、あやふやな言い方で私はこの人達とは違うという悪あがきをしたけれど結果は同じ。

私は橋本より自分がいじめられない選択をした。


「だよね~。じゃ一緒にゴールまで行こうよ」

ごめん、ごめん。

私は気分の悪い橋本さんをそのまま置き去りにした。