あともう少し。

手がスマホに触れる寸前、蒼井は左手で私の手首を掴み体勢を崩した私は膝から崩れた。

同じ目線になってしまっただけではなく顔の近さにまた鼓動が速くなった。


「俺のこと怖いの?」

スマホを持って逃げたいけどまだ蒼井の手の中だ。

「分からないから怖いんだろ?」

この質問になんの意味があるのか分からないけど確かにそれは当たっている。

言っている事が分からない。
考えてる事が分からない。

なんで私にかまうのか、なんでそんな目で私を見るのか、その全てが分からないから怖い。


「………なんなの?なんで早く思い出せとか気付けとか…。なんで私が死んだなんてあんな事言うの?怖いに決まってんじゃん。恐怖しかないよ」

今のこの時だって足が震えるほど怖いよ。


蒼井翔也は同級生で1組で目付きの悪い不良少年。いま私の中でそのたった3つの知識だけで蒼井は成り立ってる。

でもそれだけじゃない?

蒼井と私にはなにがあるの?なにがあったの?

こんな時にまたズキンズキンと頭が痛む。


「俺も分からないから知りたい。なんでここに居るのか、この状況はなんなのか」

「この状況……?」

「早く思い出せ。紺野あかり。ここは俺達がいた世界じゃない。多分ここは……」