「ねぇ懐かしくない?この写真」

アルバムを開いて美保が見せてきたのは今より少し若い私達の写真。

「これって私が声をかけた次の日にカラオケに行った写真なんだよ。ふたり共髪型違うしなんかぎこちないよね~」

確かに自撮りしてるけどちょっと距離がある。
勿論私もその時の記憶はあるけど、リアルに考えれば私はまだ現実世界にいた時。

私がここに来る前の記憶やみんなの中にいる私は作り物で、私は美保とカラオケには行ってないしクラス替えした時だってここには居なかった。

だけど最近ふっと思うんだ。

本当はこの世界にもうひとりの私がいて普通に生活したり学校にも行って。幼い時の写真やみんなが知っている私はその人なんじゃないかって。

それで現在の私がここにきて消えてしまったんじゃないかって。そんな蒼井に馬鹿にされそうな仮説を考えたりする。

だって私がいないはずの時間の記憶や写真は確かにあって、みんなが懐かしそうに話す姿を作り物だと言いたくない。

世の中にはこうしてあり得ない事が起きるし、

だったらいっそのこと、ここは私の妄想なんかじゃなくて一つの世界だったらいいのに。