「初対面なのになんで私に突っかかるの?
私何かしましたか?」

「つーかなにそのとぼけた顔。まじでイライラするわ。あれから2日も経ってるのになんで何も思い出さないわけ?」

「はい?私の方がワケわかんなくてイライラしてるんだけど!」

男改め蒼井はガシガシと頭を掻きながら私に近付いてきた。キュッキュッと上履きの擦れる音が止まる頃には目尻のホクロを発見するぐらいの距離になっていた。

「な、なに?」

何故か蒼井は何も言わない。

男子と対面する事なんてないし見られてると思うと目も合わせられないし。ってか見下ろされてる事にも慣れないしとにかくこの空気には耐えられない!

「い…言いたい事があるならはっきり言って…ください」

さっきの威勢はどこへやら。

どうしたらいいのか分からないと敬語で縮こまってしまう性格は昔から変わらない。

「はっきり?言っていいの?」

そ、そう言われると返事に困る。

嫌な事なら聞きたくないし、むしろ何を言おうとしてるのか見当もつかないけどモヤモヤとするよりはいい。

「いいよ。なに?」

私は泳いでいた目を蒼井に向けた。

どうせ大したことじゃない。何せ初対面なわけだし因縁をつけられる覚えもない。

もしまたワケの分からない事を言われて付きまとうようになったら本当に濱田先生に相談しよう。

お母さんとお父さんには心配かけたくないし、
もし言ったらお父さんなんて会社休んで送り迎えするとか言いそう。



「お前、死んだんだよ」

「へ?」

「俺とお前。学校の屋上から落ちたんだ」