私と奏汰の組み合わせに、凌さんの眉間に皺が寄る。
もちろん、奏汰と会ったのも偶然の賜物なんだけど、凌さんから見れば、私が呼び出しようにしか見えないだろう。


「楓っ!!」


再度名前を呼ばれて、キツく腕を引かれた。
グラリと身体が凌さんの方へ倒れると思った瞬間、反対の腕を奏汰に強く引かれ、身体はそのまま奏汰の腕の中に収まった。


「何をする?」


凌さんの地を這うようなその低い声、奏汰を睨む鋭い視線。



「桐島さん、楓と何かあったんですか?」


落ち着いた声で話す奏汰を見上げれば、その視線は凌さんに敵意丸出しだった。
麗奈さんとの一件を知っている奏汰。
きっと、かなり心配してくれているんだろう。


「君には関係ない。楓を離してくれないか。」
「今のも泣き出しそうな楓を離せるわけないじゃないですか。」


奏汰にそう言われて、そんな顔をしていたのかと思い知らされる。


「楓と何があったんですか?俺には聞く権利あると思います。」
「楓、おいで。帰ろう。」


凌さんのその言葉に、身体が凌さんの方へと動く。
伸ばされた凌さんの手に、私の手を伸ばそうとした刹那、またもや溢れ出すドス黒い感情。


凌さんの手が汚いわけじゃない。
凌さんそのものが汚れているわけじゃない。
それなのに私の心は言うことを利いてくれそうもない。


「いやっ・・・」


伸ばされた凌さんの手を弾き飛ばして、奏汰の胸の中に潜り込んだ。


「楓・・・・」
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」


私はそう言うしかなかった。