その手に錠をはめるまで



あたしの無言が堪えたのか、電話の彼はしょんぼりとした声を出す。



『今から会いたいって思ったのに』



あたしは今から寝るところなんだけど!



「そう、あたし眠いんだよね」



『もう響姫の家にいるんだけど』



「はぁっ?」



嘘でしょ。


そう思ってシャッとカーテンを開けてみる。


ちょうど今、綺麗な黒髪をなびかせた彼が入ってきた。


え、あたしカギ閉めたんだけど。


また勝手にピッキングして・・・・・・。


あたし、入られる度にロックが強めのやつに変えるんだけど、これでもう何回目よ。



『ふっ、まだロックが緩い。


俺が教えただろ、どこぞのロック会社よりも自分でロックをかけるほうが確実だって』



「ふんっ、雨(あめ)よりも忙しくて時間がないだけよ!」



ムスッとした顔をしてスマホごしに雨をなじる。