その手に錠をはめるまで



セスは答えない。


答えないけど、応える。


くぅんと切なげな声で鳴いて。



「ダメ、かなっ?


あたし、イヤなの。


このままお母さんやお父さんの存在が忘れ去られそうで。


あたしっ、あたしっ」



悔しいよ、何もできないことが。


お母さんたちの仕返しって言っておきながらも、個人的に奴らを壊したいってだけなのかもしれないのに。


あたしがしていることは、無意味なのかな。


ブルブルとスマホが震えて、着信を知らせる。


なかなか鳴りやまないから、仕方なしに電話に出る。



『遅い』



冷たい声がして、スマホを切ろうかと迷う。


あ、でも今切ったらまたかかってくるかな・・・・・・。