その手に錠をはめるまで



気持ちいい・・・・・・。



わんっ



「っ、ちょっ」



犬の鳴き声が気づいてほしそうに響く。


布団の中からだ。


もうっ、いっつも布団の中にいるんだから。



「おいで、セス」



大好きな犬の名前を呼ぶ。


セスという名前は、お母さんが犬を飼えたらつけたいって言っていた名前なんだ。


だからあたしは犬を飼って、お母さんが言っていた名前をつけたの。


お母さんが近くに感じられるから。



「ねえ、セス」



あたしがそう言ってセスの頭をなでてやると、セスはくぅんと鳴く。



「あたし、間違えているのかな?


多大な犠牲をかけたって、壊してしまいたいものを壊すってダメかな?」