その手に錠をはめるまで



あたしがRを陥れるまで。


あたしが奴らの手に錠をかけるまで。


その日が来るまで、あたしは顔を出さない。


そう、決めたでしょ。


萌恵奈だって守る。


萌恵奈もあたしのパートナーとして仕事をしているけど、さすがに個人的なものまでは付き合わせられない。


昴もそのことを分かっているはずだから。



「ただいま、お母さん、お父さん」



どうせ呟いたって返って来るものはないって分かっている。


それでも言うのは、あの時を見てしまった今でもまだ生きていると信じているからで。


でも現実はそうじゃないって、あたしの中で叫んでいる。


分かっている、分かっているから。


だからどうか、信じるくらいは許してください。


男用のウィッグや服の入った袋をソファーに投げ落として、あたしは2階に上がる。


お気に入りの布団にダイブすれば、もふっとした感触が伝わる。