「あ、おはよう。よく眠れた?」


お昼に一度戻ってきたらしいアベルさんと顔を合わせた瞬間、恥ずかしすぎてすぐ逃げたくなった。


だってホテルにいた人たちは、弟達を除いて全員私とレン王子のことを知ってる。昨夜何があったか……を。

許されるなら布団にくるまって一生ベッドに籠っていたい気分だったけれど。私は私の役割をきちんと果たさなきゃならない。


レン王子が私に求める役割……偽の恋人役。明日その期限が切れるまで、精一杯演じよう。彼の為に。


「お……おはようございます。あの、今日のスケジュールは……」

「まず、昼過ぎにブランドショップにいってね。仕上がりを確認しなきゃいけないから。
それからレンと一緒に福祉施設の訪問。これは非公式だけど、とある情報をリークした後だから、多少マスコミが来ると思うけど気にしないで」

「え?」


ブランドショップ? レン王子と一緒に福祉施設の訪問?


「あの……それは昨日と同じでまた新しいスーツを? もったいないので同じスーツでいいです。といいますか……昨日のスーツ代も来年からの分割払いでお支払いしていいですか?
あと……昨日のようにレン王子の秘書役をすればいいんですよね?」


私が念のため確認すると、アベルさんはにっこり笑って立て板に水で話された。


「違うよ。まあ行ってみればわかるけど、事前準備の為に必要なことだから。あと、申し訳ないけれど支払いは拒否します。だってあなたはレンの恋人なんだし、遠慮しては却って失礼にあたるよ。というかいい加減にちょっとは甘えた方がいいんじゃない? 訪問も秘書役じゃなくてちゃんとした恋人として、だよ。リークはその辺りのことを漏らしたからしっかりいちゃついてね」


この間十秒ほど。スピードが速すぎて、アベルさんが何をおっしゃってるかわかりませんでしたよ。