別にバージンを大切に取っておいた訳ではないけれど、たとえ気まぐれでもあんなに綺麗な王子様に奪ってもらえたなら……きっといい思い出になる。
どうせ、一生独りと覚悟していた。なら……最初で最後。これで……彼と別れて二度も会わなくても、私は生きていける。
(ありがとう……)
もう居ないレン王子に向かって心の中でお礼を言って。疲労感からか、いつの間にか睡魔に意識がさらわれていった。
次に起きたのはお昼に近い時間。
「いけない! 寝坊しちゃった。みんなのご飯作らないと」
慌てて飛び起きてすぐに、ベッドから派手に落ちた。派手な音が響いたからか、ドアが開いて間宮さんが飛び込んでくる。
「翠様、大丈夫ですか!?」
「は、はい……ご心配かけてすみません。びっくりして落ちただけですから」
強かに打った腰を擦りながら何とか立ち上がると、なぜか膝に力が入らなくてへろへろとその場で座り込んでしまった。
「あ、あれ……腰に力がはいらない……」
「あまり無理はなさらないでください。仕方ありませんよ。レン王子殿下にあれだけ激しく可愛がられ……ゴホン。とにかく、今は消耗されてお疲れでしょうから。ゆっくりと身体を動かすようになさってくださいね」
間宮さんが何かを言いかけたけれど、誤魔化す咳払いをしてから、服を着替えたりする朝の支度を手伝ってくれた。