クリスマスプレゼントは王子さま





お風呂は週に何度か来るけれど、今日は子どもたちお待ちかねの日。


「うわぁ、いい匂い!」

「ラーメン、ラーメン! 早く食べたいな」


お風呂の帰りに中華屋さんでラーメンを食べる。月に一度だけの、とっておきの贅沢な夕食。


しょうゆラーメンと餃子だけというシンプルなメニューしか頼めないけど、弟達はすごく楽しみにしてる。満面の笑顔で「おいしい!」とラーメンを食べる姿を見られるだけで、それまでの苦労なんて吹き飛ぶ。


今日はサンタさんとトナカイがいるから、テーブル2つを占拠してしまってます。


……にしても。いくら12月とはいえ、風呂上がりに暖房が効いて暑いだろうに。なぜに二人とも着ぐるみを脱がないんだろう?


サンタさんなんて明らかに滝の汗なんですが……。


「あの、脱がないんですか? 着ぐるみ。汗を拭かないと体が冷えて風邪ひきますよ」

「や、優しいのぅ。大丈夫じゃ! 僕……ワシは慣れておるから」


ハンドタオルを差し出しても、サンタさんは笑顔で手を振り断ってきた。


「しかし……こんな場所でディナーとは。もしや経済的に困っておいでか?」


物珍しいのかサンタさんはキョロキョロと周りを見回す。もしかすると裕福な人間でいろいろと新鮮なのかな? と笑って答えた。


「いいえ、ちっとも困ってはいません。何とか生活はできてますし、こうしてみんなで無事にご飯を食べられるのが何よりのしあわせですもの」


あれだけ健康で丈夫だった両親は急な事故と病であっけなく居なくなったから、今生きてくれているありがたさが身に染みて解る。


今すぐそばで笑っている人でも、明日には居なくなるかもしれない。だから、今を大切に精一杯生きよう。そう思ってた。