「わぁ、雪だ!雪が降ってるよ」
ご飯を食べ終えた海がダイニングルームの窓を見て、歓声を上げた。
「いつの間にか降ってたんだ。かなり積もってるね」
翼が窓に張り付くように外を見てる。その手がソワソワと落ち着かないところを見ると、どうやら二人がやりたいことは一つ。
「雪遊びしたいんでしょう?」
「うん! こんだけ積もるの久しぶりだもんな。姉ちゃん、いいだろ?」
苦笑いしながら訊けば、打てば響くように返ってくる。確かに、温暖なこの土地で雪が積もるのは数年に一度。希望は叶えてやりたい。だけど……今日恐ろしい目に遭った身からすれば、外に出す危険性をつい考えてしまう。
ついついすがるようにアベルさんを見ると、彼はニカッと笑って子どもたちに声を掛けた。
「わかった! 僕と一緒にいこっか。きっとたくさんのサンタさんが歓迎してくれるよ」
私に向かって軽くウインクしてくれた彼が、“サンタさん=護衛を増やす”という意味で安心しろ。と言ってくれたようだ。
「あ、子ども達はちゃんと厚着を……」
「大丈夫、大丈夫。その辺りもばっちり用意してあるから」
そう請け負ったアベルさんは、レン王子に向かってそうそうと声をかけた。
「おまえも来いよ、懐かしいだろう。雪遊びなんて。あ、そうそう。ちゃんと手当てはしてからな」
サンタさんのコスプレをしたアベルさんは、子どもたち全員を引き連れてさっさと出ていく。おばあちゃんは「ちょっと一眠りするよ」とベッドルームに引っ込んだ。



