クリスマスプレゼントは王子さま




自分の敵か、それ以外の括りしかレン王子にはない。


だから、人を見る目が人形のガラスの瞳のような。透明で綺麗だけど悲しいものだった。


きっと、彼の人間らしい日々は三歳の。お母様が亡くなった日に終わりを告げた。


たった3つの子どもが命を狙われながら独りで生きる。言葉にすれば簡単に言えるけど、どれだけの辛苦があったんだろう。私には想像することすら難しい。


彼の、身体の傷はいつか治る。けれど……心に負った深すぎる傷はいつ治るんだろう?


今、私にできることはほとんどない。けれど、何もしない訳にはいかなくて、妹の提案にかこつけて強引にレン王子を食事に招待をしてしまった。


食事は……ご飯は、健康と生活の基本。ちょっとでも人間らしさを取り戻すきっかけになれば……と思い、レン王子に食べてもらえる料理をせっせと作った。


そして今、レン王子が酢の物を。もっとも嫌いなものを前にしている。トラウマレベルのものを食べてもらえるのか? とドキドキしながら見守る。


もし食べなかったら、レン王子には言わない。


もしも食べたら……正直に打ち明けよう。私の気持ちを。


そんな私の勝手な賭けなど知らないレン王子は……


数分後――箸を着ぐるみの中に突っ込んだ。


その瞬間、言い知れない嬉しさが込み上げてきて。視界が白く濁っていく。


(食べた……レン王子が……やった! やったよ……)


バカみたいだけど両手で口元を覆い、泣くなと自分を叱りながらレン王子の食卓に唐揚げをいくつか置いた。