(レン王子は、どこにいるんだろう?)
一度謝罪に来た時はラウンジの辺りに佇んでいたけれど。そちらを見ても、姿がなかった。
確かシングルとは言うもののベッドルームと書斎みたいな部屋、それからラウンジみたいな部屋の3つで構成されていたはず。
ベッドルーム? でもない。なら書斎……と覗いてみたら、いた。
トナカイの着ぐるみを着たままのレン王子が、ペラペラと本を捲っていた。
見れば、ずいぶん古ぼけた一冊の絵本。
レン王子はそれを、最初から最後まで読んではまた最初から繰り返し眺める。
何回も、何回も。
その後ろ姿が……なぜか、とても小さく見えたのはきっと私の目の錯覚で。気のせいだと思う。
けれど……
きっと、彼の心が幼いままで迷っているんだと。泣きたくても泣き方すら知らず、涙を流せない悲しいひと――。
なぜ、だろう。
私は、いつの間にかそうはっきりとレン王子を理解してた。
独りぼっちでさ迷い続けた迷子。
まだ絵本を捲ろうとする手に、私はそっと自分の手を重ねた。
自分のぬくもりが少しでもこの人の心に伝わるように。私のぬくもりを少しでも感じるように願いながら。
「……もう、やめて。そうやって自分を傷つけて追い込まなくていい。あなたはもう充分以上に傷ついてきたんだから」



