近場にある昔ながらの銭湯は顔馴染みで、“やりくりが大変だろう”と値引きしてくれるからありがたい。
今日はトナカイとサンタクロースまで連れているからか、番台に座るおじいちゃんも目を丸くしながらも。
「もうすぐクリスマスだから縁起が良いねえ。だから仮装の人の分はタダでいいよ」
なんて笑ってオマケしてくれた。
そして、当然お風呂は女湯と男湯に別れるものでして。
サンタさんとトナカイが男湯に消えて、ほっと胸を撫で下ろした。
(サンタさんはおじいちゃんとして……トナカイはわからなかったもんね)
おばあちゃんと風花と美麗ちゃんのお世話をしながら、ロッカーに荷物を預けてお風呂へ。
やっぱり広い湯船にゆっくり入るのは気持ちいい……けど。
薄い衝立のような壁を隔てた男湯から、海のすっとんきょうな声が響いてきた。
「え~兄ちゃん変わった目の色してるね! 日本人じゃないの?」
(え……兄ちゃん!?)
弟の叫びを聞いた瞬間、体が固まった。
まさか……トナカイの着ぐるみに入ってた人は……若い男性?
でも、と私はすぐに思い直す。今の時期にバイトに励む若い男性なら、きっと恋人持ちの学生だ。だから、意識するだけバカだよ。自意識過剰ってやつだ。
(うん、大丈夫……私を女性だと認識するはずない)
ちらっと見下ろすと、女性としては貧相な割にしっかりと筋肉だけはついた身体。
ちょっとだけ落ち込んで、ぎゅっと目を閉じたまま湯船に顔を沈めた。



