クリスマスプレゼントは王子さま




怖々と303号室の前に立つと、ドアの前にいたのは憮然とした皐月さんとアベルさん。


「アベルさん……レン王子は」

「ちょっと今、一匹狼モードに入ってる。僕たちでも近寄れないんだよね」


やれやれ、と肩を竦めた彼は、「こうなったら放っておくしかないよ」と諦め気味に話した。


「あの……こんなことを言ってはすごく厚かましいんでしょうけど。私に……任せていただけますか?」

「あんた……また性懲りもなくレン王子殿下に」


突っかかってきた皐月さんに、アベルさんは手のひらを向けて制止させた。


「皐月、君の役割はレン王子のボディーガード。御身をお守りすることで、それ以上でもそれ以下でもない。危険を排除しようとする姿勢は立派だけど、私情を挟んだ好き嫌いで判断するのは感心しないな」


それに、とアベルさんは鋭い瞳を向ける。


「レン王子に関わる全ての決定権は僕にある。彼女はレン王子にとって有益な人物と僕が判断した以上、余計な口出しは不要だ。サツキ·グレン」


明らかにアベルさんの方が小柄ではあるけれど、彼の毅然とした態度は堂に入ったもので。あの皐月さんが悔しそうながらも渋々従った。


「……はい。申し訳ありませんでした。以後慎みます」

「よろしい。では、翠様。よろしくお願いします。あなたならきっとレン王子も……」


急に侍従長らしくなったアベルさんに戸惑いつつ、許可を下さったお礼を言ってレン王子の部屋に足を踏み入れた。