(違う、そんな先のことよりも……今は王子のことを考えなくちゃ)
間接的にとはいっても、私がレン王子にケガを負わせたのは事実。責任を取りますとアベルさんには伝えたけれど、彼は微妙な笑顔だけで何も言わなかった。
私を選んだことを後悔……しているかもしれない。ううん、きっとそうだ。役に立つどころか足を引っ張ったりしたから。
いいえ、それよりも。
私が悔しかった……というより悲しかったのは。
レン王子にまた傷を増やしてしまったこと。
車であれだけ強引に治療をしてお説教をしておいて、結局自分がケガを負わせた。
どうしよう……
どうやったら、彼の痛みを和らげられるんだろう?
皮を剥いた玉ねぎを刻みながら、じわりと滲んだ涙を手の甲でぬぐう。すると、いつの間にか隣におばあちゃんが立ってた。
「どうやら涙は玉ねぎだけが原因じゃないようだね?」
「……おばあちゃん」
「わたしで良ければ聞くよ。もっとも、無駄に長く生きてるだけだから大したことは言えないけどね」
「ううん……ありがとう」
真っ赤になった目を見られたくなくて、下を向きながらぽつりぽつりと話した。
弟達に聞こえないように気をつけながら、大まかだけど今までの経緯をほぼ全て。
たぶん、抱えてきたものの大きさに一人では耐えきれなくなったのだと思う。誰かに分かち合うという当たり前のことを、今やっとしていた。



