本社ビルで敵対する勢力からの襲撃を受けたレン王子。
エレベーターに仕掛けられたトラップで危うくなったけれど、予想外にあっさりと相手が引いたことで危機は脱した。
だけど……。
レン王子は、私を庇ったが為に撃たれた。
銃弾は腕をかすっただけの擦過射創としても、肌についた傷がかなり広くてアベルさんにすぐに病院に連れていかれたけれど、治療をろくに受けることなく勝手にホテルに帰って来ていた。
当然、アベルさんは烈火のごとく怒ったけれど。トナカイの着ぐるみを着たレン王子は、何も言わずにただジッと部屋で佇むだけ。
私も声をかけにいったけれど……その背中がいつになく頑なに他人を拒絶しているように感じて。謝罪の言葉をかけるだけで精一杯だった。
「ごめんなさい……私が余分なことを言って相手を怒らせてしまったから。お詫びにもしも私ができることがあれば、なんでもおっしゃってくださいね」
見えないだろうけれど、ペコリと頭を下げて部屋から出れば。やっぱり皐月さんのイヤミが待っていた。
「あんたが余計なことを言わなきゃレン王子はお怪我をされなかった! その辺りはちゃんと理解してるのか?」
「はい……申し訳ありません!」
「庶民のあんたと違って、将来国王の可能性もあるお方だぞ! 落とし前はどうつける……いたたっ」
「自分が護衛しきれなかったからといって、八つ当たりと責任転嫁しない。まったくみっともないわね」
皐月さんの耳を引っ張った間宮さんが「気にしないでください」と言ってくれたけれど……とてもそんなに簡単に忘れられるものではなくて。気が重いままに外から帰ってきた弟たちを出迎えた。