次の訪問先はギリギリに到着して、申し訳ないけど後悔はしてない。
レン王子の肩や背中は包帯でぐるぐる巻きになってる。一応スーツで隠れない部分には見えないよう配慮したけれど。
次の訪問先はとある企業の本社ビル。業界ではかなり大手で、今回はレン王子の所有する鉱山に関するビジネスでの来訪らしい。
アベルさんから聞いた話だと、レン王子は所領にいくつもの鉱山や鉱脈を持っているとのこと。
以前はろくに草も生えないただの荒れて痩せたはげ山だったのが、調査の結果レアメタルをはじめとして様々な鉱物の埋蔵が確認された。 時価にすれば数億円以上の規模らしかった。
私はそれを聞いて「すごいですね」としか思えなかったし、実際にアベルさんにそう言ったら。彼はなぜか苦笑いをしてた。
「変わってるね、君は。お金持ちだからちょっとお小遣いをもらったり何かを買ってもらおうと思わないの?」
「え? なぜですか? だってそれはレン王子のもので、どうするかは彼の自由でしょう。私は欲しいものがあれば何とか頑張って自分で買いますから大丈夫ですよ」
すごく当たり前のことを話しただけなのに、アベルさんには受けたようで彼はお腹を抱えて笑ってた。
「それを、今までレンに関わろうとした女どもに聞かせてやりたいね。がめつい女どものお陰でレンは立派な女嫌いになってくれたし」



