はぁ、ともう一度レン王子の口からため息がこぼれる。
「退いて、重いから」
レン王子にボソッと言われて、慌てて身体を退かせる。というか、さりげなく「重い」って。私が太ってるとおっしゃいましたか?
逃げようとしたってムダですよ? という意思表明ですぐそばでジッと見ていると、何を思ったかレン王子はワイシャツのボタンを外し始める。
そして全てのボタンを外し終えると、何の躊躇いもなくシャツを背中まではだけた。
「よ、よ~し、覚悟してくださいね! 遠慮なくいかせてもらいますから」
鼻息荒く治療の為に消毒薬を開く私を、レン王子は無言なまま見てる。緊張はするけど、構うもんか! と脱脂綿に消毒薬を含ませて傷口に押し当てた。
ピクリ、と肩が跳ねた。やっぱり痛いんだ、とついつい口の端が上がる。
「ほら、治りが悪くて染みるでしょう。ちゃんと手当てして清潔にすれば早く治るんだから、これからは意地を張らないでケガをしたらちゃんとみんなに言ってくださいね」
傷口を消毒しながら、なんとなく言った言葉にちょっとだけ寂しさを感じた。
(そっか……そうだよね。これは本来私の役割じゃない。レン王子はクリスマスが終わったら帰る……私とは明後日までの付き合いなんだ……)
ううん、と頭を左右に振って治療に専念する。何を考えているんだろう、私は。もともと彼と私は住む国も世界も違う。こうして一緒にいられるだけでもすごいことなんだから。
(そうだよ、うん。これはきっといい思い出になる。何年か後には笑って話せる思い出に……)



