「すみません、間宮さんも皐月さんも少しの間車から出ていただけますか?」
「あんたに命令される義理はないけど。それに、レン王子殿下に何をするつもりだ?」
案の定、皐月さんにはすごい目で睨まれたけれど。間宮さんが彼の耳を思いっきり引っ張った。
「バカね、恋人同士が二人きりになりたいというのを察しなさい。すみません、翠様。五分ほどしかありませんがどうぞごゆっくり」
間宮さんが喚く皐月さんの耳を引っ張りながら出ていったけど……すごい力。
しばらく呆気に取られてたけど、レン王子がまだ仕事をしている姿を見て我に返る。
ビニール袋からあれこれを取り出して車のシートに並べてから、レン王子の横に座れば。彼は初めて私に目を向けた。
「……何をするつもり?」
「あなたのケガを治療するためです!」
私はそう宣言してから、彼の服を脱がせるためにスーツの袖を掴んだ。
「ケガ? なんのこと」
彼は極めて無関心そうに私の言葉をスルーしようとした。だから、私は彼の服を脱がそうと両手でスーツを引っ張った。
「とぼけないでください! あれだけのケガをして、何の手当てもしてないなんて。体にいいはずない。現に、右手を動かす時に痛いでしょう? 誤魔化そうったって無駄ですからね」
逃げようとしているからか、微妙に身体をずらしつつある彼を逃がすまい、と私は彼の腕を掴んだまま真正面からシートに乗り上げた。
「さあ、観念して手当てさせてください! じゃないとみんなに怪我のことを言いますからね」



