活発でやんちゃな男の子なら、多少ケガをするのなんて珍しくない。
だけど、成人男性があれだけのケガをすること事態が異常だ。なのに、彼はろくに治療すらしない。もしかすると身支度を一人でするのも、シングルルームに泊まるのも。他人に身体を見せないため?
どれだけ、ぞんざいに自分を扱っているんだろう。王子という身分以前に、人としてあり得ない。
私は、だんだんと頭に血がのぼってきてた。だからかもしれない。前後不覚で大胆な行動ができたのは。
「すみません、アベルさん。薬局に寄ってください」
「え、なぜ?」
「いいから! 早く!!」
まるっきり弟達に対するものと同じ口調で言うと、呆気に取られながらも時計を確認した。
「……次の訪問先まで後30分か。まぁ偶発的な事柄だから、馬鹿もいきなりは無理でしょ。10分間だけ車を留めるかね」
「十分です」
アベルさんは後続と前方の護衛車に何かを指示すると、近くのドラッグストアの目立たない場所に停車させた。
「じゃ、今から10分後にまた来るから」
「はい! わがままを聞き入れてくださりありがとうございます」
何かを察したのかアベルさんは一度車を降りて一番近い護衛車に向かった。代わりにSSらしい護衛の人が車の近くに何人も立つ。何だか黒服が目立ちますね……。
ごめんなさい、と心の中で謝りながら、間宮さんとともにドラッグストアに駆け込み、ひととおり目的のものを買い込んで急いで車に戻った。



