そんないつもと変わらない毎日、唐突にそれはやって来た。
弟たちと外出の支度をしていると、ドンドンとドアが叩かれて開いてみれば。
そこにあった(居た?)のは……トナカイの着ぐるみ。
「…………」
「…………」
なんじゃらほい?
しばらく無言でトナカイと見つめあっていると、ヒョイと顔を出したのはサンタさんだった。
「MerryX'mas!……にはちと早いが。おめでとう! 君にはクリスマスケーキをプレゼントじゃ!」
先日見たサンタさんが陽気に手を叩いた後、トナカイを肘でつつく。よくよく見ればトナカイは赤い箱を抱えていて、サンタさんに促され渋々といった感じでそれを差し出す。
「え、ケーキ? マジで!?」
「けーき! 食べたい!!」
海に続いて美麗ちゃんが期待に満ちた目で赤い箱を見る。そりゃ今はお腹が空いてるからな……と苦笑いしながらも、未だに信じられない気持ちで二人(?)を見た。
「あの……本当にいいんですか? そんな高価なものをいただいても」
「安心しなされ。君はトナカイに選ばれたのじゃ。特別中の特別じゃぞ!」
何が安心か根拠に乏しいけれど、クリスマスケーキを前に翼まで嬉しそうに笑っていて。みんながどれだけケーキを望んでいたかを思い知る。それだけにぬか喜びはさせたくなくて、受け取るしか無かった。
「あ……ありがとうございます。ではお礼と言ってはなんですが……ご一緒にお風呂にいきませんか?」
タオルを差し出しながら言うと、さしものサンタさんもきょとんとしてた。



