「……なにしてんの?」
痛くてしばらく動けないでいたら、レン王子の呆れた声が聞こえて。これはいけないと慌てて起き上がろうとしたら……
今度は足が滑って床で鼻を打った。
「……痛い……」
両手を伸ばしたバンザイの姿勢で倒れていると、あまりの痛みに涙が滲んできた。
「すみません……い、今退きます……うぅ……ぐえっ」
息苦しくなってすぐに体が浮いてぶらぶら動いたけど。 それは、レン王子が子猫を運ぶように私の身体を首の後ろを摘まんで引き上げたからで。
「ふ、服で首が絞まって……い……息が苦しいです」
「そう」
無感情に返したレン王子は、とんでもないことに一度私をひょいと放り投げた。
「ひゃあ……あ!?」
ぽすん、と収まった中は……
なぜか、レン王子の腕の中で。
別の意味で固まった私を彼はベッドルームまで運んで、ポフンとその上に座らせた。
「氷なら、冷凍室にあるから」
そう告げたレン王子はどうやら着替える為にか背中を向けたけど……
それを見た瞬間、ドキッと胸が跳ねた。
細身だけど引き締まった広い背中。そのままだったら芸術的と言えたそこには、無数の傷痕があったから。
しかも、命に関わりそうな大きな傷からまだ治りかけてる真新しい傷まで。薄くなった古い傷だけでもかなりの数だ。
特に目立つのが右腕に近い傷。まだ真新しいのか、赤い傷口が開いてた。
そこで、昨日聞いた日下部刑事の言葉が思い出された。
“コイツはいろんな意味で命を狙われる”――と。



