(えっと……着替えはどこに置けば)


今日は9時から公務が始まる。今は8時近いから、寝ていたらそろそろ起こさないとダメだよね。


シングルとは言うもののベッドルームと書斎みたいな部屋、それからラウンジみたいな部屋の3つで構成されていた。


(あれ? 居ない)


部屋にいれば渡して終わりと考えていたのに、ベッドにも姿がない。どこに置いておけば……とうろうろしているうちに、ガチャリとドアが開く音がして振り向けば……


そこにいらしたのは


バスタオルで身体を拭く以外まったく何も身につけてないレン王子でして。


「……………!!」


声が出ない悲鳴を上げたまま固まった私に、レン王子は無感情な琥珀の瞳を向けて呟いた。


「なにか用?」

「あ……あの」


冷たい声で逆にフリーズが解除された私は、すぐに顔を横に向けて手にした袋を差し出した。


「アベルさんが……着替えを渡せって」

「ふうん」


ガサッという音と手の重みが消えたことで、彼が着替えを受け取ったのを知ってほっと息を吐く。


シャワーを浴び全裸のままの絶世の美形と二人きり、なんて絶対に心臓が持ちませんから。


(に、任務完了! これ以上長居は無用。逃げるが勝ち!)


「そ、それでは、さようなら……あぎゃ!」


さっさと逃げようと踵を返しかけたのに、何を考えたのか私の足は何もない場所でもつれ、派手に転んだ。


それも、顔面から見事にダイブしたため。強かに打ってしまいました……。