おばあちゃんがついていってくれるのはありがたいけど、それだと一層危険が増すような。悩む私に、近くに立っていたアベルさんがこう言ってくれた。
「なら、さ。今日は庭園の迷路と地下街を探検してみたら? このホテルからは地下を通じて行ける地下街があるんだ」
「え、マジ!? 見たい!」
アベルさんの発案に、さっそく海が飛びついた。
「君たちも行くかい? 僕は今日お仕事だから、おばあちゃんと一緒にいってね。あ、一応案内役もつけるから」
アベルさんがにこやかに言うと、海に負けず劣らずに期待に満ちた目を向けた翼がしっかりと頷く。どうやら彼も地下街探検を楽しみにしてる様子。風花だって控えめではあるけれど、口元が綻んでる。よほど嬉しいんだ。
裕くんと美麗ちゃんはお母さんが引き取りに来ないからまだこちらで預かっていて、地下の探検と聞いて「わぁい!」と無邪気にはしゃいでいた。
たぶん案内役は護衛役も兼ねてるはずだし、ホテルに近いなら大丈夫かな……と渋々頷くしかなかった。
「すみません、弟たちがわがままで。よろしくお願いします」
「気にしないで。遊び盛りの子どもを閉じ込めておくほうが可哀想でしょ」
アベルさんはニコッと笑ってたいしたことないよ、と言ってくれる。お言葉に甘えてばかりで情けないけど、いつかきちんとお礼を返そうと心に決めて。今は弟たちにめったにできない体験をさせてやろうと思う。
年が明けたらすぐにアパートを決めてそこに移る。それまでのことだから、貴重な日々を1日たりとも無駄にしたくはなかった。



